2021 サンパウロGP スプリント予選 -まるで魔法!ハミルトンが見せた渾身の逆襲

 ルイス・ハミルトンは19ポイント差でマックス・フェルスタッペンを追いかけ、2年ぶりのインテルラゴスでのサンパウロGPに挑んだ。ところが予選でDRSに技術違反が見つかり予選タイムはトップだったが、スプリント予選直前に失格の裁定が下された。レースに対してすでに5グリッド降格が決まっている状態で、スプリント予選は最後尾スタートと窮地に立たされたハミルトンはまさに神がかった走りを見せてくれた。クリスチャン・ホーナーはスプリント予選後、ハミルトンのスピードを「別なフォーミュラに乗っていたようだ」と語っていたように周囲を驚かせた。

 注目したいのはその走り方だ。ハミルトンのオーバーテイクのほとんどはターン1で成功したが、彼のオンボード映像を見返すと実質的な最終コーナーであるターン12でのライン取りを前方のクルマに合わせて自由自在に変えて完璧なトラクションを生み出していた。

 圧巻だったのはファイナルラップでのランド・ノリスに対するオーバーテイクだ。このオーバーテイクを果たす直前のターン12通過時点で両者のギャップは0.64秒だった。それを完璧なライン取り、トラクションコントロールで時速27kmの速度差を生み、たった1回のチャンスをものにした。

 そしてスプリント予選中の無線を聞いても、ハミルトンに対して通信があったのは10回のみ、いずれもエンジニアであるピーター・ボニントンからの一方的なもので、ハミルトンからは一切返事がなかった。これがチームに対してハミルトンへの信頼の強さも表している。ハミルトンは「どこまで抜けるかわからないけど、とにかく自分のことに集中して、絶対に諦めないという気持ちで全力を出し切った」と語っていたように、彼がデビュー当初から持っていた野性的な感覚を100%使って16回のオーバーテイクを実現させたように彼のオンボード映像から感じられた。

 明日のレースではエンジン交換によって5グリッド降格となり、10位スタートとなるハミルトンだが、その鍵を握るのは温度になりそうだ。スプリント予選では路面温度が30℃前後、さらに日も陰ってソフトが機能しやすいコンディションとなった。そのため、下のラップタイム遷移が示すように、ソフトタイヤを履いていたバルテリ・ボッタスやカルロス・サインツのペースは大きく落ちず、それぞれ2台のレッドブルから順位を守ることに成功した。しかし路面温度が上がるとオーバーヒートの影響が大きくなり、より戦いを難しくするので、各ドライバーとも明日の温度を気にしているコメントが多くあった。

 明日のレースでは暖かくなることが予想されており、そうなると2回ストップが主流になるという見解がピレリから出ている。スプリント予選ではドライバーの力で自分の順位を奪い合う戦いが見られたが、レースでは適切なタイヤ選択とピットストップ作業が要求され、まさに総力戦になるだろう。それぞれのチャンピオンシップが激化する中で、総力戦を勝ち抜けるのはどのドライバー、チームなのか、大注目な一戦が迫っている。

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