2年ぶりに復活したメキシコシティでのグランプリは、ホンダPUが得意とするサーキットであり、メルセデスは後塵を拝す展開がここ近年の流れだった。今年はレッドブルが速さをさらに伸ばしていることから大方の予想ではレッドブル有利となっていた。しかし蓋を開けてみれば予選結果はメルセデスのフロントロウ独占だった。なぜメルセデスはレッドブルを上回ることができたのか、今回はその秘密に迫ってみよう。
予選を振り返る前に金曜日の結果をおさらいしよう。FP2では路面の汚れも落ち始め、各車予選シミュレーションをFP1よりも積極的に行った。マックス・フェルスタッペンが2位バルテリ・ボッタスに対し0.424秒差、タイトル争いのライバルであるルイス・ハミルトンには0.509秒差を付けてトップだった。ここでフェルスタッペンとハミルトンのテレメトリーデータを見てみよう。
下のグラフはFP2でのフェルスタッペンとハミルトンの最速ラップを計時したときのもので、上から車速、スロットル開度、ブレーキ度合いを表す。数字はコーナー番号となる。

ここで注目したいのはターン7からターン10までの区間だ。この区間ではフェルスタッペンがハミルトンを継続して上回っていたことが車速から伺える。またスロットルを見ても、フェルスタッペンが全開時間が長いのに対し、ハミルトンは短くこの区間でバランスが得られず苦しんでいたことが分かる。
しかし一夜明けるとその様子は一変した。FP3でのテレメトリーが示すようにハミルトンはFP2よりも全開時間が長くなり、全体的なスロットル開度もフェルスタッペンを上回っている。これにより課題としていたS字区間はフェルスタッペンと互角以上の速さとなった。

予選でもこの状態は継続し、結果としてフロントロウ独占に繋がった。2人のFP2とQ3のテレメトリをそれぞれ重ねてみると、ハミルトンはS字区間での改善が大きかったのに比べ、フェルスタッペンは金曜日から土曜日にかけての伸びは小さかったことも分かる。(上:ハミルトン、下:フェルスタッペン)


ハミルトンは予選後の会見で、セッティングを微調整をしただけと語っていたが、苦しんでいた様子から考えると勇気を持った判断と言えるだろう。その判断が功を奏しこの結果が得られたのだから、ハミルトンにとってはポールポジションこそ取れなかったものの1-2には満足感があるだろう。そんな表情が予選後のインタビューからも垣間見えた。
レースでは、空気が薄いためDRSやスリップストリームの効果が通常よりも小さく、メルセデスがレッドブルを最高速で上回っていることからコース上での追い抜きは難しいと考えられる。戦略面ではロスタイムが大きく、ピレリの見解では1ストップが有利と出ており、戦略的なチャンスも少ない。そして注目したいのは、スターティンググリッド1列目にメルセデスがいるが、2列目をレッドブルが固め、今シーズンではケースが少なかったスタートからチームメイトも含めた総力戦となり、1周目から目が離せない展開になる。金曜日から課題を克服したメルセデスがレースでも好調を継続するか、レッドブルがメルセデスを上回るパフォーマンスを見せられるか、大一番が控えている。
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