2年連続でコロナ禍のピンチヒッターとして開催されたトルコGPはまたしても雨模様のレースとなった。舗装されたばかりでまったくグリップしない路面から今年はサーキットが洗浄を念入りに行った努力もあって今年のイスタンブールはかつて見せていた中高速サーキットの様相を取り戻した。
しかしレースはあいにくのウェットコンディションになり、58周、1時間31分の間一度もドライとならず完全インターミディエイトという類を見ないものになった。特殊な状況ではあったが、勢力を見定めるには面白いデータもあったので今回はそれを紹介したい。
まずは戦略面から振り返りたい。下は各車が使用したタイヤとピットストップのタイミングを表したものだ。各車霧雨が降ったりやんだりする状況で、いつかドライになることを期待してスティントを伸ばす戦略をとった。

そして各車の戦略は2つに分かれた。一つは通常通りタイヤの消耗具合からピットストップを行う1ストップ、もう一つは最後まで一つのインターミディエイトで走りきり、ドライになったタイミングでピットに入る戦略だ。
前者の戦略を取ったのは主にトップ争いをしていたバルテリ・ボッタス、マックス・フェルスタッペン、そしてセルジオ・ペレスとカルロス・サインツだ。彼らは25周目から降り出した雨が強くなってきたのも考慮して、ピットストップを行うことを決断した。
下にあるラップタイムグラフを見ても、23周前後でピークとなっていたタイムが以降落ち込み、タイヤのゴムもかなり消費している状況と考えれば妥当な判断だっただろう。

一方で上位へジャンプアップを狙っていたルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールは限界まで走り切る戦略を取っていた。彼らもボッタスらと同様のラップタイムの傾向だったにも関わらず、ドライバー自身の判断でトラックポジションを重視し走り切る方法を取った。
しかし実際にはハミルトンは後方からの追い上げで前半に多くのバトルを繰り広げており、ボッタスよりもタイヤの消耗は厳しかったはずだ。またルクレールも度々ハードブレーキングを要すターン12で右フロントをロックアップするリプレイが映されていたのを見ると、タイヤはヘルシーな状態とは言えなかったはずだ。
ここでスティント前半と後半のラップタイムの傾向をまとめた2つのグラフを見比べてみよう。1周目から35周目と39周目から58周目の2つに分けて、箱が小さいほどラップタイムのばらつきは少なく、箱が下にあるほど平均してタイムが速かったことを示す。


これを見るとハミルトンとサインツは後方からの追い上げだったため、遅いタイムもあるが、ところどころで先頭集団に匹敵するタイムもあったことが分かる。またルクレールは2人よりも安定したラップタイムで第1スティントだけで言えば全体ベストのペースだったことも伺える。
一方で第2スティントはルクレール、ハミルトンの箱はグラフの上に位置し、先頭から遅れる傾向が強く出た。先頭集団よりも後に入ったが、スティント前半はグレイニングが出やすくタイムが伸びない状況が続いたためだ。
このデータから想像すると、ルクレールもサインツと同様に早めにピットインして追い上げる時間を長めに取れば表彰台も十分狙えたはずだ。下の各車のギャップを示したグラフを見ても分かるように、ペレスがピットインする直前の37周目の時点で両者の差は18秒もあった。フェラーリが10秒ほどのピットストップを行ったとしても悠々3位は確保できるところだった。しかしフェラーリはそれをみすみすのがし、ルクレールの意見を尊重しコース上にとどませることを決断した。

いずれにせよ、今回のフェラーリは戦略面で損したポイントが大きかったが、全体的なペースで見れば、新スペックのPUのおかげか復活の兆しがあり、今後のレースの結果が非常に楽しみになるものだった。
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