イタリアGPの予選はバルテリ・ボッタスが久々のトップタイムを記録し、土曜日のスプリントに向けて新たな期待すべき要素が加わった。一方で予選時にはドライバーの間で混乱もあった。それはFP1から始まっていた。ランド・ノリスの無線で次のような会話があった。
「今気づいたんだけどみんなアウトラップよりもスローラップですごく遅くクールダウンしてるよ」
このノリスの報告に対してチームは
「遅いスローラップはペナルティには当たらないよ。誰も妨害してないからね」
と遅いラップであっても咎められないことが明らかになった。
さらに予選中にはダニエル・リカルドに対してこんなアドバイスもあった。
「デルタがネガティブになるなら誰にも妨害するなよ」
デルタとは不要にクルマがスローダウンして、後続から高速で迫ってくる車両との事故を防ぐためにあるいわば最低速度の制限だ。レース中よく聞くのはSC導入時に、”Keep delta positive(デルタに対してポジティブで行け)”つまりデルタタイムを速いペースで行けということだ。このデルタタイムを下回るとペナルティの対象になり得る。
しかし、今回リカルドに出されたのは「デルタがネガティブになるなら」と、デルタタイムに対して遅いペースを容認している指示だった。
事実上デルタタイム以下で走ることを認められた各ドライバーは、タイムを稼ぐために前車のトウを使おうとピットレーンから大渋滞となり、アウトラップから大きな混乱を招いた。
Q1ではマックス・フェルスタッペンやピエール・ガスリーが怒りの無線を出し、各車が満足の行くアタックをできるような状況ではなく、最高のパフォーマンスが出しきれず不完全燃焼に終わった。
各車のラップタイムを見ると、アタック後のスローダウンラップは多くのドライバーで2分台を計測しており、SC2からSC1の通過時間を考慮してもレースディレクターが設定した1分43秒を上回る状態だ。確認できる限り13個のタイムがデルタタイム以下に相当していたが、FIAからは何の審議もかけられていない。
これではもはやデルタタイムの役目すら保てていないと思うが、今後のレースでどのようにFIAが対処するか注目していきたい。

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