金曜日の走行が失われたニュルブルクリンクでのアイフェルGPは、今回も中団争いで大きな刺激があった。ダニエル・リカルドが自身2年ぶりとなる3位、ルノーにとってはワークスチームとして復帰して以来初めての表彰台となり、3位のレーシングポイントとは6点差、4位のマクラーレンとは2点差とポイントを縮めた。このリカルドの戦いとレーシングポイントの争いに焦点をあてて、アイフェルGPを振り返ってみよう。
まずは下に示すギャップグラフを見て欲しい。注目するのは、黄色の実線で描かれたリカルドの推移と、その近辺の線との差だ。薄い目盛りは2秒間隔、濃い目盛りは10秒間隔としており、下に行くほど後方に落ちていることを表している。

予選からルノーは好調だった。リカルドとエステバン・オコンでそれぞれ6位、7位グリッドを確保し、後ろに控えるマクラーレンやレーシングポイントをスタートから抑えられる構成が取れた。まずこれが抜きづらいと言われるニュルブルクリンクでは重要なことだった。1周目ではオコンがスタートに失敗し、9位に順位を落とすものの、リカルドはアレクサンダー・アルボンを交わして5位に浮上し、さらに上位を伺う体制へと入った。
リカルドの前を行くシャルル・ルクレールのペースが思うように上がらず、後ろにぴたりと付けていたアルボンからプレッシャーをかけられていた。しかしルクレールは早々にソフトを諦め、ピットに入ったことでリカルドはペースを回復することができた。そしてジョージ・ラッセルのリタイアによって生じたVSCによって得られたフリーストップもリカルドにとって追い風となった。
VSCが解除されるとすぐにピットストップを行わなかったピエール・ガスリーを交わし、一気に前を行くカルロス・サインツやセルジオ・ペレスを追いかけた。彼らも序盤でルクレールのペースに付き合わされいたが、VSC時に入らず、スティントを伸ばすことで1ストップに切り替えていた。そのためリカルドはコース上で抜かなければならない状況になっていたのだ。これは抜きづらいニュルブルクリンクでのレースでは厳しい状況となり得るものだった。
しかし前方の1ストッパー勢はリカルドと対峙する前にピットに入ったためリカルドはそのまま自分のペースでタイヤなどをマネジメントすることができた。また、ペレスのペースが良く、リカルドがこのまま順当に2ストップを行ったとしても順位を守れる可能性が低かったため、チームは変則的な1ストップに移行することを決断したのだった。
ところがペレスがちょうどリカルドの11秒後方にまで迫ったときに再びリカルドに好機が訪れた。ランド・ノリスのリタイアによってセーフティカーが出動したのだ。これでリカルドは順位を落とすことなくピットに入ることができ、ペレスのわずか1.7秒前方でレースを再開させることができた。そのあとはリカルドがしっかりとペレスからの猛攻をしのいで、3位表彰台を掴み取った。
このレースではVSCやセーフティカーがリカルドの援護となったことは間違いないが、そこに至るまでの過程が完璧だった。下のラップタイムを示してたグラフからも分かるように、1ストップになり得ることも想定して、第2スティントの序盤からペースを上げず、安定したペースを保っていた。そのペースも中団の中では最も速いペースで、確実に3位を守れるだけの力があった。ペレスがピットに入ってからはおよそ0.5秒のペース差で追い上げられるものの、それまでのリカルドの速さがなければSCでペレスに交わされる可能性も十分にあった。したがって今回のレースのキーポイントは第2スティントのリカルドのペースだったと言えるだろう。

ルノーはハイドロ系のトラブルでオコンをリタイアで失うものの、結果的にはレーシングポイントやマクラーレンよりもこのレースで獲得したポイントを上回り、さらにコンストラクターで3位に迫ることができた。まさにリカルドが成し遂げた業として考えてよいだろう。
一方でレーシングポイントもリカルドの3位は取られるものの、ニコ・ヒュルケンベルグが激しいレース中の中団争いをうまく掻き分けたことで、2ポイントを獲得し、マクラーレンやルノーにランキングで並ばれることを防ぐことができた。ランス・ストロールの代役としてはこれ以上ない働きぶりをしてくれたヒュルケンベルグにはチームからも称賛の声が当然のごとく挙がっていた。
シーズンも残すところあと6戦と佳境に差し掛かってきたが、まだまだ中団の激しさは増すばかりで、今後に期待が大きくかけられるレースとなった。
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