2020 F1 第10戦 ロシアGP -コンストラクター争いを混沌とさせたルノーの戦略

 ロシアGPでは、コンストラクターズポイントで激しい争いを繰り広げるレーシングポイントとルノーが戦略的で高いレベルの頭脳戦を繰り広げていた。結果としては、レーシングポイントのランス・ストロールが1周目でリタイアしたのが響き、ルノーに5ポイント差に詰め寄られる形となったが、セルジオ・ペレスがルノーの2台の前に立ちレースを制した。今回はその理由について考えてみよう。

 予選の段階では、ペレスが4位、ダニエル・リカルドが5位、エステバン・オコンが7位とペレスが一人ルノーの上でメルセデスやレッドブルに最も近い位置を確保していた。しかしスタートではペレスがマックス・フェルスタッペンのコースオフの影響を受け、ルノーの2台に前を行かれる展開となってしまった。さらにストロールが1周目にリタイアしたことにより、ペレスが一人でルノーの2台に立ち向かわなくてはならない状況になってしまった。

 これで同じソフトタイヤを履いて、チームメイトも一人失ったレーシングポイントは不利になりやすい状況だった。しかし、その後のペレスの意地の走りはお見事だった。下のラップタイムグラフやギャップを示したグラフからも分かるように、ルノーとまったく同じペースで、前の2台から離れることなく、常にチャンスを窺っていた。オコンはタイヤに苦しんでいたという状況はあるものの、オコンよりもタイヤの状態が悪くなかったリカルドとのペースを比較しても遅れる気配を見せず、ルノー勢さえかわすことさえできれば、ペース的に優位に立てる状況であったことを思わせるような走りを見せていた。

 そしてこの状況はルノーの動きですべてが変わった。15周目にリカルドがタイヤのタレに耐えきれず、ピットに入ったのだ。もちろんペレスのアンダーカットを阻止するために入ったということもあるのだろう。今回はハードタイヤのタレに関してはあまり不安を抱えることもなかったので、早めにピットインしてもピットストップが1回増えるような状況にはつながらないため、この決断にはある程度理解ができる。しかし、ルノーはリカルドだけでなく、オコンもペレスのピットインを待たずしてピットインさせたのだった。

 よく見ると、リカルドがピットに入った15周目からオコンがピットインする18周目までのペレスのペースは1秒近く速いペースではあり、オコンのタイヤの状況からも考えてペレスのピットインを待たずにオコンを入れたのかもしれない。しかしこれは大きな間違いであると考えられる。

 まず、オコンはピットに入る前ペレスに抜かれていないことから、例えペース差はあったとしても、ペレスを抑えてリカルドをペレスの前に確実に行かせることが可能だった。またオコンが先に入ったことで、ペレスに対してタイヤの履歴の差を使ってレース終盤にかけて差を詰められるチャンスを自分から手を離してしまったのだ。

 さらに不幸なことに、リカルドとオコンはピットインしていなかったセバスチャン・ベッテルの後方に入ることになり、これで大きくタイムを損した。結果的に両者はペレスの前に立てず、さらにはシャルル・ルクレールとの戦いに集中しなければいけない状況になってしまったのだ。最終的には、オコンとリカルドの順位を入れ替えて、リカルドを交わしたことでさらなるポイント獲得のチャンスを失うことは防げたものの、4位、5位を取れる状況で自らそのチャンスから手放してしまったことには変わりない。

 今回は、ベッテルの位置も見誤るミスも重なってのことだが、これでコンストラクターズ争いは混沌としてきた。今後はこのような戦略上のミスも命取りになりかねないレースが続き、より緊張感の高まる展開が期待できそうだ。

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