11週間で9レースという前代未聞の過密スケジュールを終えて、F1は今シーズン初のフライアウェイへと入った。今回のロシアGPから後半戦に入ることもあって、いくつかのチームでは空力やPUに対してアップデートを投入した。特にホンダエンジンを搭載しているレッドブルやアルファタウリに関してはアレクサンダー・アルボンを除いて金曜日から3基目のPUに交換したことでその効果についても注目が集まった。
まずは予選シミュレーションの様子を見てみよう。今回のFP2のコンディションは気温が28℃、路面温度が37.9℃と特別高い気温ではないが、今シーズン初めて投入されたC5タイヤの扱いに関してはトリッキーだったようだ。その理由は、今回のサポートレースはF2しかされないのに加え、このサーキットでは普段あまりレースが開催されず、風も強めに吹いていたことからFP1からコースをはみ出したり、タイヤをロックさせるシーンが目立ったからだ。ピレリのコメントの中でも、これらの要因に加えて、トラックエボリューションが非常に大きく出ていたため最適なセットアップを定めるのが難しいコンディションだったことを認めていた。
そんな難しいコンディションの中で、トップタイムをマークしたのはロシアを得意とするバルテリ・ボッタスだった。ボッタスはルイス・ハミルトンに対して0.267秒差を付けるタイムを記録していたが、2周のクールダウンを入れたあとに出したタイムだった(2:08.684はピットインしたときのタイムのためカウントせず)。まだ金曜日なのでクルマのコンディションを決めつけるのには時期尚早だが、ピレリのコメントでは左フロントにブリスターが見られたという報告もあったことから、タイヤの温度が厳しい状況で、なんとか絞り出したタイムであることが推測される。またボッタス自身もセッション後に「すべてのセクターをまとめあげることができなかった」とも語っており、まだタイム的に伸びしろを残した状態で土曜日のセッションを迎えることになる。

一方予選ペースで速さが光ったのは、ルノー勢だった。特にダニエル・リカルドはFP1で2位、FP2では3位と本人が「セットアップに対して変える必要がない」と語っていたほどの仕上がりを見せている。一方でエステバン・オコンも「エアロやエンジンについてリカルドと別なセッティングを試していた」と語っており、チーム側もセッション中の無線で「セットアップの違いはあるけど、良いタイムだ」と伝えていたシーンもあり、両者ともに状態が良さそうだ。
しかしロングランになると、メルセデス以降のチームの中で激しいひしめき合いとなっている。以下に示すソフトのロングランを見ると、各車クリアラップが取りづらい状況であったため綺麗な周回はできていないものの、グラフ上の各点の傾向から考えると、レーシングポイント、ルノー、レッドブル、アルファタウリ、マクラーレンが同じような位置にあり混戦模様が窺える。特にピエール・ガスリーに関してはソフトで最も安定したタイムを残しているが、大半のラップについてカルロス・サインツを上回るペースであったことから、イタリアGPで見せたレース中の接近戦が再び見られるかもしれない。それはガスリー本人も認めていて、「レースペースは強力で、ロングランには満足している」とトスカーナGPでの雪辱を晴らすのに十分な自信を窺わせている。
心配された今回のソフトタイヤであるC5のライフだが、先にも述べたようにトラックエボリューションもあることから現状でリミットを定めることが難しい状況だと思われる。しかし左フロントにブリスターが出ていたことを考えると、他のコンパウンドよりも慎重なマネジメントが必要であることが窺える。

今回のレースではピットでのロスタイムが大きく24秒程度と見られているため、特に上位陣は1ストップでレースを切り抜けようと企んでいる。そうなるとミディアムでのスタートがレースを楽にさせる大きな要因となるが、Q2での戦いに大きな注目が集まる。しかし今回のコンパウンド間の性能差を見ると、ピレリの発表ではソフトとミディアムで0.7秒差あるということなので、FP2の結果から考えるとミディアムでQ2通過が狙えるのはメルセデスのみだ。しかしギャンブルを打ってミディアムを使うところが出てくるかも一つの注目ポイントで、レース展開を左右しかねない決断が予選から待ち受けている。


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