スペインGPはルイス・ハミルトンが優勝を収め、今シーズンのメルセデスの強さをそのままに表すレースとなった。全体的にも波乱も少なくこれまでのレースとは違って穏やかな展開だったように見受けられるが、このレースではいくつかの疑問点は注目ポイントがあった。今回はそれらのポイントを紹介しながらスペインGPの内容を深めていこう。
まずこのレースでドライバー・オブ・ザ・デイとなったセバスチャン・ベッテルについて見てみよう。ベッテルは予選で11位に落ち込んだことで、スタート時のタイヤを自由に選択できる立場となった。そこでベッテルはミディアムでのスタートを選択し、スティント後半ではフリーエアで走ることでオーバーカットを狙った。
では実際のペースはどうだったのか。下にあるラップタイムを示したグラフを見てみよう。縦軸はタイム、横軸は周回とし、上に行けばペースが速いことを示している。そこでのベッテルのペースを見てみると、ベッテルはレース後半でなるべく良い状態でタイヤを持たせるために、ペースが全体的に遅かったように見える。結局ピットに入る29周目まで中団で真ん中程度のラップしか残せておらず、SCなどが入らなければこれまで以上に苦しくなったことが想像される。

そんな状況を見てフェラーリはベッテルをピットへ呼び込みソフトへと交換した。残り36周を残す段階でもあったので、ハードにすれば確実に1ストップが望めるところだったが、おそらくフリー走行から見られていたハードのグリップ不足を懸念してソフトに切り替えたものと思われる。当初は2ストップの予定だったと思われるが、クリーンエアを獲得できる状況でもなく、今のフェラーリからすれば絶対的な直線スピードもないため、いくら新品タイヤとはいえ追い上げるのは難しいと考えられていただろう。そのためこの第2スティントのソフトに交換する決断は妥当であったと考えられる。
その後はベッテルのワールドチャンピオンらしい腕が光った。第2スティントでソフトに替えてからは、ランス・ストロールとカルロス・サインツしか抜かれておらず最小限のダメージで食い留めることができたのは、チャンピオンとしての意地だったのかもしれない。
またこの1ストップを決断した時には、ベッテルが守備に必要なラップタイムを聞き出し、そのとおりにギャップを遷移させたことも今回の7位獲得の大きなポイントだった。ここまでのレースでは、今年フェラーリから離れることが決まっているだけあって、チームの運営にも疑問の声が上がっているが、それらを払拭できるほどの活躍をこれからも見せられるか、ベッテルの腕に期待と注目を寄せていきたいところだ。
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