初の8月開催となったスペインGPの金曜日は、先週の70周年記念GPで大きな問題となったタイヤの耐久性に対して注目が集まった。路面温度50℃に達する非常に熱いコンディションの中、各チームは予選シミュレーションやレースシミュレーションを通してタイヤの反応を確認していた。各チームの予選ペースとレースシミュレーションの内容を見てみよう。
予選のペースで言えば、今回もメルセデスが圧倒的なペースを見せつけた。3位のマックス・フェルスタッペンに対して0.8秒差をつけ、今シーズンの流れをそのまま継続している。タイヤのコンパウンド間の性能差はピレリの分析によれば、ソフトとミディアムが0.7秒、ミディアムとハードが1秒となっており、メルセデスだけはQ2でミディアムでの通過が可能な状況だ。一方で、フェルスタッペンと10位のピエール・ガスリーとの差は0.6秒となっており、フェルスタッペン以下のミディアムでのQ2通過は現段階では不可能と見られている。

しかし、ソフトのタイムの出方を見ると、各車最速タイムを記録したのは1回目のフライングラップのみで出ており、2回目以降のアタックでは誰も最速タイムを記録できなかった。そのため一発でタイムを決めなければ予選の後半やレースで苦しくなることが考えられ、緊張感が高まる予選の展開となりそうだ。
ロングランのペースを見てみよう。ソフトに関してはセバスチャン・ベッテルとジョージ・ラッセル以外がロングランを行ったが、どのクルマもデグラデーションは小さく、ラップタイムは安定していた。メルセデスの両ドライバーも、ブリスターは無かったと語っており、シルバーストンで見られたタイヤの破壊に関しては現時点では心配がなさそうだ。しかしルイス・ハミルトンがセッション後語っていたが、イギリスGPでもメルセデスにはブリスターが見られなかったため、まだ気を緩めることができない状況が続く。

ソフトのペースではメルセデスがここでも速いペースを見せ、その下にはフェルスタッペンが付けている状況だ。しかしそれ以下のフェラーリを含めた中団勢は、ペースに大きな違いはなく、70周年記念GPと同様に混戦の展開が見られそうだ。しかし、ここまで中団勢の上位に名を連ねていたマクラーレンは苦戦が続いているようだ。カルロス・サインツは「シルバーストンで起きていたタイヤのオーバーヒートの問題はここでも見られた」と話しており、レース終盤にペースの低下の原因となっていた問題が解決されなければ今回も苦戦が予想され、マクラーレンにとっては正念場のグランプリとなるかもしれない。
ミディアムとハードに関してもソフトと同じ傾向が見えた。その中で一つのサプライズとなったのがハースのパフォーマンスだ。ケビン・マグヌッセンはFP2で予選シミュレーションができなかったために、タイムシート上では16位に沈んだが、「ロングランはすべてがポジティブだった」と話しており、これまでに無いパフォーマンスが得られていることを語っていた。ロマン・グロージャンも「このパフォーマンスがどこから来たのか正直分からないが、シルバーストンで良いセッティングを見つけられた流れがここにもある」と話しており、その好調ぶりはドライバーのコメントからも窺える。これが土曜日以降も継続するかは、今回の大きな注目ポイントとなるだろう。


上位を見ればメルセデスが強いペースを見せ、フェルスタッペンがレースペースでチャンスを窺うことにこれまでと変わりはないが、中団争いを見ればマクラーレンの苦戦とハースのパフォーマンスアップが見受けられ、勢力図に変化の兆しが見られている。果たしてスペインGPでその展開がどう現れるのか、注目してみていきたい。
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