2020 第4戦 イギリスGP -波乱を巻き起こしたパンクに予兆はあったのか

 イギリスGPは、昨年と同じタイヤコンパウンド(C1, C2, C3)が採用され、FP2では赤旗の影響もあって各チームはタイヤに関して手探りの状態である中でレースを迎えていた。蓋を空けてみればSCが2回出動したが、各車はトラックポジションを重視したために、最後のスティントにハードタイヤを履いて乗り切ろうとする戦略が大半を占めた。しかし実際にはハードタイヤのライフはレース終盤には限界を迎え、バルテリ・ボッタス、カルロス・サインツ、ルイス・ハミルトンがいずれも左フロントをパンクさせ、レースの結果に大きな影響を与えた。このパンクの問題について、データや各ドライバーのコメントを見ながら考えてみよう。

 まず各車の戦略をおさらいしよう。クビアトのクラッシュによって出動されたSCが出動し、各チームはロスタイムが少ない瞬間を狙ってハードタイヤへの交換を行った。ピレリがレース前に発表していた推奨の戦略を見ると、ハードでは一番長くても34周程度の走行が最適とされていた。それに対して今回のハードでのスティントは各車が40周と考えていた。ピレリの推奨よりは少し長いものの、タイヤマネジメントをしっかりと行っていれば達成できなくはないもののように見えた。

 では実際はどのようなパフォーマンスが見られていたのか、パンクした3台に加えてマックス・フェルスタッペンのタイムをグラフにしたものを見てみよう。

 ここで一緒に確認してほしいのは、各ドライバーのレース中の無線だ。今となっては、パンクの予兆となる様子を表す無線がボッタスとサインツから出ていた。ボッタスは42周目に「バイブレーションが大きくなってるけど、フラットスポットじゃないよ。バイブレーションだけだ」と報告を入れている。「フラットスポットじゃない」という言葉からもあるように、この段階では強く心配する必要がないことをチームに知らせていた。同時期のラップタイムを見ても、ボッタスはハミルトンと同じペースを刻んでいた。しかしその後確実にポイントを獲るために、ペースを緩め当時の対応としては定石通りと見ていいだろう。

 一方サインツもボッタスと同様にこんな無線を48周目に入れていた。「クルマからすごくバイブレーション出てるよ」サインツもペースを見ていると、ランド・ノリスやダニエル・リカルドからの猛攻を凌ぐために、バイブレーションがあってもペースを緩めることがなく、パンクする直前まで安定したタイムは刻めていた。こちらもパンクが起きるまでは、バイブレーションがありながらもタイヤが壊れるほどではないと感じ、走り続けていたことが推測される。

 ハミルトンもボッタスがパンクしてタイムを緩めるまでは全体で最速のペースを維持しており、問題がない様子が窺えた。本人もレース後の記者会見で次のように語っていた。「予兆はほとんどなくて、僕はただタイヤを労っていたんだ。走っていてもスムーズで、ターン3もよく機能していたよ。どれほど深刻なのか走りながら確認しようと思ったけど、フィーリングからは何も無かったんだ」と語っており、今回パンクした3人に共通することは、バイブレーションはあったがフィーリングからは感じることができなかったということだ。

 この問題を受けてピレリは各車のパンクの原因を調査しているが、この段階でもそれは明確になっていない。しかし次戦の70周年記念GPは、1ランク柔らかいコンパウンド(C2, C3, C4)が使われるため、その懸念は増えていく一方だ。さらに今年は新型コロナウイルスの影響で、従来チームが選択しているセット数も、全チーム共通で固定されている。ピレリは火曜日までに結果をまとめることを目標としているが、チームも同様に二度とパンクを引き起こさないようにするめに今頃対応に迫られている状況だろう。今回起きた問題について、チームがどこまで改善し、ライバルを引き離せるかが来週の見どころとなる。

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