ハンガリーGPの中団勢は、レース開始時にインターミディエイトでの走行を余儀なくされたことから、オーストリアとは異なる展開になった。最終的には10秒ペナルティを課されたが、フォーメーションラップ中のドライバーに対してのピットイン指示によって、順位を上げたハースが台風の目となった。一方で、自身最高グリッドの3位からスタートしたランス・ストロールは、上位勢と同じ戦略を取って4位を獲得した。今回はいつもとは一風変わった中団勢の争いをデータを通してみながら、これらの展開の背景を考えてみよう。
今回は各車の毎周ごとのギャップを示したグラフに注目してほしい。縦軸にギャップ、横軸は周回で、グラフが下に行くほど先頭とのギャップが離れていることを意味する。

まずハースの戦いに注目してみよう。先にも述べたようにハースの2台は、フォーメーションラップ時に路面が乾いてきているのを見て、ピットインさせ両者ミディアムに交換した。早めにドライタイヤを履いたことも功を奏し、一時ケビン・マグヌッセンが3位、ロマン・グロージャンが4位を走行し、抜きにくいハンガロリンクでトラックポジションという最大のアドバンテージを獲得した。その後はハースもレースペースは上位勢に対抗できるほどのペースは持っていなかったものの、後方から追い上げるクルマの壁となって立ちはだかった。
最終的には技術指令書に定められたフォーメーションラップ中のドライバーエイドの禁止を破ったとして10秒ペナルティが課された。しかし、実際のハースがレースを終えた位置を見れば、ペナルティを受けていても順位を上げていた。ケビン・マグヌッセンは16位からスタートしたが、同じような位置からスタートした一人としてエステバン・オコンがいた。オコンとマグヌッセンのラップタイムは同じであったが、10秒ペナルティを含めた最終的なギャップは17.041秒だった。マグヌッセンが1回分のピットストップ分を得したと考えれば、10秒ペナルティであっても、この作戦に効果があったことは明らかだ。フォーメーションラップ中の無線でペナルティが取られたケースは今回が初めてであるが、このFIAの裁定の理由については気になるところだ。
話をレース序盤に戻そう。ハースがフォーメーションラップ中に多くのクルマの前で壁となって立ちはだかった恩恵を大きく受けたのが、ストロールだ。ストロールはハース勢を16周目までに攻略したことで、タイヤへの負担も小さく留めることができた。これが今回のレースで大きなポイントになった。
そのポイントの効果が最もよく現れたのは第2スティントだった。バルテリ・ボッタスがストロールにプレッシャーを掛け続けるが、コース上で一度も順位を譲らず、33周目にアンダーカットを仕掛けなければならない状況に陥れたことが、今回のストロールがいかに早かったかを具現化している。このアンダーカットによってボッタスに順位を明け渡すことにはなったが、早々にハース勢を抜いた効果が大きく影響して、3回目のピットストップに関してはフリーストップを獲得し、4位を確実なものにした。
今回は表彰台争いには絡まず、単独走行が多かったので、映像に映る機会は少なめだったとはいえ、このレーシングポイントの戦い方を見ると、彼らの本来の強さが窺えた。来週からは2週連続でシルバーストン、3週目にはカタロニア・サーキットとクルマのポテンシャルが結果に大きく影響するサーキットが続く。ハンガリーで見せたレーシングポイントの強さは戦略と現在2番目の競争力を持つと言われるクルマが相まってより強力なレース展開が見られるかもしれない。
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