F1 2020 第3戦 ハンガリーGP -フェルスタッペンが2位を獲得した3つの要因

 史上初のオーストリアでの2連戦を終えて、2020シーズンのF1はハンガリーで3戦目を迎えた。ハンガリーではメルセデスが金曜日から終始強さを見せて、ルイス・ハミルトンが2連勝を収め、ランキング首位に立った。一方2位に入ったのは、マックス・フェルスタッペンだった。フェルスタッペンはレース直前のスターティンググリッドに向かうレコノサンスラップ中にターン12でクラッシュを喫したが、メカニックの圧巻の活躍で、クルマを修復し、戦線へと復帰させた。そしてフェルスタッペンは終盤バルテリ・ボッタスの猛攻をしのいで今シーズン最高位となる2位を獲得した。今回はこのフェルスタッペンのレースをデータを交えながら振り返ってみよう。

 まずレース中に使用したタイヤを確認しよう。フェルスタッペンはインターミディエイトでスタートした中では最も遅い4周目にピットインし、ミディアムへ乗り換えた。その後ミディアムの寿命を迎えたところでハードに替える最もスタンダードな戦略を取った。

 各車のギャップを表したグラフも見てみよう。縦軸はギャップ、横軸は周回で下に行くほどトップから離れていることを意味する。

 スタートではボッタスのスタートの出遅れによる混乱をうまく避けて、1周目を3位で終えた。フォーメーションラップの時点でドライラインが見えていたので、早々にピットへと入るドライバーがいる中で、フェルスタッペンは4周目までインターミディエイトで引っ張った。これは後ろにいた、ランス・ストロールやシャルル・ルクレールも同様にスティントを引っ張っており、ピットでの混雑をなるべく回避しロスタイムが増えるリスクを避けるためだったと考えられる。結果的にストロールは3周目にピットインして、ハース勢の後ろに戻ったのに対し、フェルスタッペンは1周遅らせたことで、ハースの前でレースに復帰することに成功した。これがこのあとの結果に大きく影響を及ぼし、2位を獲得した一つ目の要因だ。

 これによって第2スティントは、前後10秒に誰もいない状態を作り出すことができ、自分のペースでタイヤをセーブすることができた。その効果は2回目のピットストップ時にも持続した。ボッタスがストロールをアンダーカットするために、33周目にピットインしたが、フェルスタッペンが序盤ハースに蓋をされなかったことで、2回目のピットインを終えた時点でもボッタスを5秒後方に退けることができた。

 そしてタイヤの履歴が変わらないボッタスを巧みに抑え込み、確実にチャンスを潰していた。ボッタスはレース後に次のように語っている。

 もし僕が入らなかったら抜くのは難しかったと思う。だからピットインしたことに対しては、タイヤの違いが大きく出るし良い判断だったと思っているよ。実際あと少しのところでマックスを抜けたからね。実際にはバックマーカーが多くいたからそれが影響したと思う。あと1周か2周あれば彼を抜けるところまで行っていたと思うよ。

 つまりボッタスが違う戦略を取らないといけないほど、フェルスタッペンの壁は高く立ちはだかっていたということだ。第3スティントでボッタスが新品のハードを履いて、攻めてくる一方でフェルスタッペンはトラックポジションを守るためにステイアウトした。そのペースを下のグラフで見てみると、ボッタスから平均して0.5から1秒も遅いペースではあったものの、最後の勝負でタイヤを残すためにペースを安定させられいたことが窺える。

 ここで2つ目のフェルスタッペンが2位を取った要素が隠されていた。それはバックマーカーの対処だ。今回のレースでは、トップ3台と他のクルマとのペース差が大きくなっており、周回遅れが多く発生した。それは一時ハミルトンが5位以下を周回遅れにしていたほどだった。フェルスタッペンも同様に第3スティントでは彼の前にバックマーカーが多く現れ、その対処は毎周のように行われていた。一時はなかなか道を譲らないドライバーに対して苛立ちを見せる無線もあったが、1台1台を確実に抜いていき、そのロスに目立ったものはほとんどなかったことがこのペースグラフから窺えた。

 フェルスタッペンが抜いたバックマーカーは当然ボッタスも追い抜いていかなければならず、ボッタスにとってもそれは大きな障害となったことは、先ほど紹介したコメントからも分かる。そしてこれらのペースを持って、最後は0.7秒差にまで詰め寄られたが、ボッタスに抜かれるような危ないシーンはなかった。

 最後にフェルスタッペンが2位となった要因として、当然のごとく挙げなければならないのは、メカニックの活躍だ。あれがなければ、フェルスタッペンはレースもスタートしておらず、2位にはなれなかったからだ。(F1.comにメカニックの奮闘ぶりがノーカットで掲載されているので、ぜひ見てほしい)フェルスタッペンはそのメカニックに対して次のように賛辞を送っている。

Hungarian GP: Red Bull's incredible 20m pre-race repair fixes Max Verstappen's car
See how incredible teamwork from the Red Bull Racing mechanics enabled Max Verstappen to recover from a pre-race crash to taking the start of the 2020 Hungarian...

 クラッシュのあと、グリッドに着いてクルマから降りて、「終わった」って言ったけど、メカニックがすぐにクルマに向かって作業を初めて、素晴らしい仕事をして治してくれたんだ。とにかくレースがスタートするときはそれだけで嬉しかったね。1周目からクルマの調子も良くて、戦略でも良いタイミングでピットに入ることができたんだ。おかげで今日は2台のメルセデスの間に割って入ることができたよ。僕らにとっては素晴らしい結果だし、思ってもみなかったよ。

 フェルスタッペンにとってのハンガリーGPは、金曜日からクルマの不審な挙動に苦しめられ、予選も7位と厳しい結果となったが、レース中に起きたこの3つの要因がフェルスタッペンを笑顔にさせる2位をもたらした。とはいえ今週は金曜日から終始クルマの不審な挙動に苦しめられ、予選でも7位と本来の位置に付けなかった。レッドブルがこの根本的な問題を解決しない限り、今シーズン中の優勝も危ういだろう。今回見せたチームワークでどこまで挽回できるか、レッドブルにある課題はまだ多く残っている。

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