シュタイアーマルクGPは、メルセデスとしては2連勝、ルイス・ハミルトンにとっては14年連続の優勝を記録するものとなった。レース中最大のライバルとなり得たのは、フロントロウからハミルトンと並んでスタートしたマックス・フェルスタッペンだった。しかし結果を見てみれば、ハミルトンはフェルスタッペンに対して一瞬たりとも隙きを見せなかったどころか、メルセデスのチームプレーによって、バルテリ・ボッタスを2位にあげて今シーズン初の1-2を飾った。今回は、メルセデスとフェルスタッペンのレースを振り返りながら、フェルスタッペンの優勝の可能性を探ってみたい。
レースは前日の予選の雨の影響でスタートタイヤはQ3進出者も自由に選択できることになったが、3人ともソフトタイヤでスタートすることを決めた。
各車のラップタイムを確認してみよう。いつものように縦軸をタイム、横軸を周回にしたグラフになっている。

ラップタイムを見てまず印象的なのは、4周目のセーフティカー明けのラップタイムだ。ハミルトンは1:08.631だったのに対して、フェルスタッペンは1:09.382でおよそ0.7秒もの差があった。これによって、たった1周でハミルトンはフェルスタッペンをDRS圏外へと追いやり、その後の1stスティントも平均して0.5秒速いペースを刻み、完全にレースを支配していた。
2ndスティントに入ると、フェルスタッペンはスティントの前半ではハミルトンと同じようなペースを刻んでいたが、その後は徐々にリアタイヤの劣化もあり、さらにタイヤの履歴で10周も若いミディアムを履いたボッタスに対して追い込まれる展開となった。フェルスタッペンも一度はボッタスに食い下がるもそれが精一杯で67周目に2位の座を奪われたことになった。
この展開に対していくつかの疑問点が上がっていた。まずはフェルスタッペンのペースだ。1stスティントではハミルトンに対して0.5秒ずつ置いていかれる状況ではあったが、2ndスティントの前半を見れば同じようなペースを刻んでおり、チャンスがあったかのようにも見えた。しかしフェルスタッペンはレース後このように語っている。
今日はルイスがペースを握っていたよ。彼は僕のラップタイムを知っているから、ギャップは伸びたり縮んだりはしないんだ。僕は自分のペースで走るだけだったよ。マージンはいつも残しているけど、僕が少しプッシュしたところで、ルイスもプッシュするんだ。外から見ればプッシュすればいいと思うかもしれないけど、タイヤがダメになってしまうんだ。だからマージンを残して走っていたんだよ。
マージンは残していたというフェルスタッペンだったが、完全にレースを支配をされている状況では為す術もなかった。ではメルセデスが2台で戦う一方で、フェルスタッペンはチームメイトであるアレキサンダー・アルボンが遠く離れたところにいたが、もしアルボンがフェルスタッペンに接近してレースをしていたらどうなっていただろうか。アルボンはボッタスに対してアンダーカットを仕掛けて、今回のように10周のタイヤの履歴の差を生み出すことなく、2位の座を守ることができたかもしれない疑問がある。
アレックスがいてもいなくても状況は変わらなかったと思う。もちろんいたほうが彼にとっても良かったけど、今日に限って言えば関係なかったね。またフロントウィングにダメージがあると突然聞かされたけど、バランスに問題はなかったよ。それ以前にあまりプッシュしていなかったしね。とにかく僕たちはストレートでのパワーとグリップが得られるように頑張らないといけないんだ。
このようにフェルスタッペンは我々の疑問も簡単に否定し、まったくチャンスがなかったと語る。フェルスタッペンが課題だというストレートでのパワーとグリップ不足が大きなハンデとなっているようだ。次戦は去年ハミルトンと最後までガチンコのバトルをして、王者を苦しめたハンガリーだが今の状況でどこまで戦えるのかは見守っていきたいところだ。特にハンガリーでは低中速コーナーが多くあるため、フェルスタッペンがオーストリアでは欠けていたというクルマのグリップはメルセデスと戦う上で重要なファクターとなる。1回目の3連戦の最後のレースで、どこまで改善ができるか、チャンピオンシップを狙うレッドブルの伸びしろに注目していきたい。
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