F1 2020 第2戦 シュタイアーマルクGP -今年も激戦の中団グループ!一番強いのはどのチーム?

 史上初の同一サーキットでの2週連続開催となった、シュタイアーマルクGPは前回のオーストリアGPの経験を活かして各チームは改善を図ってきた。それだけに各チームの素早い修正能力が問われるレースになったが、今回最もお茶の間を熱くさせたのは、マクラーレン、レーシングポイント、ルノーの3チームの戦いだっただろう。結果としては、ランド・ノリスが2週連続で強烈なファイナルラップを勝ち抜いて、ベスト・オブ・レストの位置を確保し、もう一人のグランプリウィナーと言っても良い活躍を見せた。今回は、この3チームの戦いを振り返りながら、この中で最速のチームを見極めてみよう。

 まず、各車の戦略を振り返ってみよう。下のタイヤの使用表からわかるように今回は1ストップが主流のレースとなった。今回注目する3チームの中では唯一ダニエル・リカルドがミディアムでのスタートを選択し、残りはソフトを1stスティントに、ミディアムを2ndスティントに当てる戦略を取った。

 各車のラップタイムも見てみよう。縦軸をタイム、横軸を周回にしたグラフになっている。

 併せて見てほしいのは、下に示した各車のギャップを示したグラフだ。縦軸がギャップで、横軸が周回、下に行けば行くほど先頭から離れていくようになっている。

 まず1stスティントに注目してみよう。1stスティントに関しては各チームともほぼ同じラップタイムで推移しているが、ノリスだけは14周目から20周目の間のタイムが悪い。これは14周目にランス・ストロールにターン3でオーバーテイクされた影響と、スタート直後にリカルドと接触してリアのバランスを失いペースを落としていたピエール・ガスリーに蓋をされていたからだ。これによりノリスは、カルロス・サインツからストロールまでの集団に置いていかれることになり、序盤は不利な戦いとなった。

 しかし2ndスティントになると状況が変わる。まずサインツはリカルドやストロールからのアンダーカットを防ぐために、集団の中では一番最初の32周目にピットに入った。しかし左リアの交換に手間取り、7.2秒のピットストップで通常の停止時間に比べて5秒近くロスしてしまう。これでペースの遅いロマン・グロージャンやキミ・ライコネンを予定外に追い抜いていかなければいけない状況になってしまった。これがサインツのタイヤを早死させる要因となり、レーシングポイントの追撃体制は潰えてしまった。サインツもこの展開を悔やんで、「ペースはあったがトラフィックがありそこでタイヤを潰してしまった」と語っており、ピットでのミスが大きく影響した。

 一方レーシングポイントはストロールとセルジオ・ペレスで戦略を分けた。ストロールはサインツに合わせるように、33周目にピットへと入り、サインツを抑えながらリカルドのアンダーカットも狙う作戦を取った。一方でペレスはスティントを伸ばして、ミディアムでスタートしオーバーカットを狙うリカルドをカバーするように二手に分かれた。

 ミディアムで周回していたリカルドのペースに落ち込みがなかったものの、ストロールのアンダーカットを気にしてか、37周目にピットインをする。結果的にはストロールの2秒前で復帰するが、これが後に仇となった。ペースがまったく上がらず、燃料が軽くなっても1stスティント終盤のペースよりも2ndスティントのペースの方が悪いこともあり、ストロールに対して防戦一方の展開になってしまった。結果論にはなってしまうが、ストロールの位置を気にせず、ミディアムの美味しいところを余すところなく使ってソフトで追い上げる方が良かったように見える。これにはリカルド本人もレース後のインタビューで「ミディアムのペースは強かったが、ソフトはうまく使い切れなかった」と話しており、今後の課題となったようだ。

 さてペレスの方はミディアムでスタートしたリカルドよりもスティントを1周伸ばした。ピットアウトしたタイミングでは先に入っていたリカルドやストロールに先行を許すも、45周目、48周目に立て続けにオーバーテイクを決めて、その先にいるアレクサンダー・アルボンに対しても追い上げを見せた。この追い抜きはそれぞれ躊躇なく1発で決めており、今後の戦いを有利に進めたという点でも大きな仕事をやってのけたといえるだろう。途中でもエンジンモードを上げてファステストラップを連発し、もう一歩で4位を獲得するところまでのパフォーマンスを見せ、今後の戦いにも期待がかかる内容だった。

 一方でストロールは、ペレスのようにエンジンパワーを上げられなかったのか、タイヤ的に難しい状況だったのか定かではないが、70周目までリカルドを抜けず、ペレスがダメージを受ける前までは15秒以上の差を付けられてしまった。これが最終ラップにノリスに抜かれる要因になってしまい、痛い結果となった。

 さて最終ラップに怒涛の追い上げを見せたノリスの2ndスティントを見てみよう。ノリスはギャップグラフを見てもわかるように、2ndスティントの線は横ばいに遷移している。これはトップのルイス・ハミルトンと同じペースで走っていたことを意味し、いかにノリスが猛烈なペースで追い上げていたかが分かる。

 実はノリスのエンジニアは47周目にこんな無線を投げかけている。

📻リカルドはソフトで5位にいる。最後までMAXペースだ。リカルドを捕まえられるかもしれないぞ。

 もともとノリスとリカルドは10秒以上離れていたが、ソフトを履いていたリカルドが落ちてくるかもしれないと思ったマクラーレンが確実にポジションを上げるために、このような指示を出していた。しかもストロールがリカルドを抜きあぐれていたために、マクラーレン側としては意外にもストロールまで捕まえられる結果になったのだ。

 しかしこれはまぐれではなくマクラーレンの実力でもぎ取っている。その理由は、リカルドのギャップグラフにおける落ち込みにある。リカルドはハミルトンに対して62秒差でレースをフィニッシュしている。実はノリスも45周目終了時点でハミルトンに対して62秒差だったのだ。つまり、ノリスが2ndスティントでハミルトンと同様のペースを残していなければ、リカルドに届かなかったことになる。この結果をもたらしたチームワークはもちろん、クルマとしての進化も窺えるレースとなった。

 サインツに関して言えば、ピットストップでのミスさえなければペレスの前で復帰していたはずで、もしノリスと同様のペースを残していればこちらもアルボンを攻められる展開になっていただろう。

 一方で、理想的な結果とはならなかったものの、ペレスが途中でファステストラップを連続で記録し、アルボンを10周以上に渡って攻め続けたことも考えれば、こちらの戦闘力も侮れないことが明らかになった。

 ルノーは2レース続けて冷却システムに問題を抱えて、先週はリカルド、今週はエステバン・オコンがリタイアする状況で完璧な開幕シリーズにはなっていない。しかしリカルド本人が語っているように、予選時のペースが思い通りに残せれば、レースでも高い位置でフィニッシュすることも可能だ。ただし、このレースではソフトがうまく使えなかったために思うようなペースが残せなかったという点では課題が残った。

 シュタイアーマルクGPの結果だけを見れば、3チームのポテンシャルは、マクラーレンとレーシングポイントは同レベル、少し離れてルノーという状態と考えられる。今回は、サインツやペレスにミスがあったために、実力をそのまま示すようなリザルトとはならなかったが、今後も継続してこの3チームによる激しい戦いは続きそうだ。

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