F2 2020 第1戦 オーストリア -初戦から見せたアイロットの成長

 今シーズンは新型コロナウイルスの影響を受けて、F2もF1と同様に初夏のオーストリアから開幕した。今年のF2は、このカテゴリで経験が豊富なドライバーとF3から上がってきた多くのドライバーが入り混じって戦うシーズンで、誰がチャンピオンになってもおかしくない。その激しい戦いの幕開けのレースで勝利を収めたのは、カラム・アイロットだった。今日は先日のオーストリアでのレース1を振り返りながら、彼のレース中の強さを見ていこう。

 まずレース1を簡単に振り返ってみよう。ポールポジションは周冠宇、2位にはフェリペ・ドルゴビッチ、3位にアイロットが付けていた。スタートはアイロットがホールショットを決めるも、すぐに周に抜き返されて、序盤は周、アイロット、ミック・シューマッハの順でレースが進んだ。そして17周目から周、アイロット、シューマッハの順で1周違いでピットへと入り、各車がソフトからハードへと交換した。そして3人ともにオーバーカットを成功させ、19周目の時点ではシューマッハ、アイロット、周のTOP3へと変化した。しかし、タイヤのウォームアップの違いによって再び順位が入れ替わり、23周目には再び周、アイロット、シューマッハの順になった。

 そして26周目に事件が起きた。突如周のマシンがホームストレートでスローダウンたのだ。さらに27周目にはアーテム・マルケロフがエンジンブローし、リタイア。これによってセーフティカーが導入された。周はなんとかレースに復帰したが、大きく順位を落とし、アイロット、シューマッハ、マーカス・アームストロングのTOP3となった。

 31周目にレースはリスタートしたが、直後のターン7でシューマッハが飛び出して、優勝争いから離脱した。これでさらにアイロットにとって追い風となり、そのまま開幕戦のトップチェッカーを切った。

 このレースでのキーポイントはSC開けのリスタートだった。各車が履いていたタイヤはアイロットが12周、シューマッハが11周、アームストロングが23周走ったハードタイヤでリスタートを迎えていた。各車のラップタイムも下のグラフで見てみよう。縦軸がタイムで上に行くほどペースが速く、横軸がラップ数だ。

 注目したいのはセーフティカー開けのペースだ。タイヤの履歴の違いがあるとはいえ、アイロットは2位のアームストロングに対しても0.5秒近いペースで差を広げ、他のドライバーを寄せ付けない速さを見せていた。またそのタイムに関しても、最後まで大きな落ちも見られず、タイヤを最後までよく使えていたように見える。このレースのタイヤの扱いについてアイロットは次のように語っている。

 去年はいつもソフトタイヤがあったから、攻めながらもタイヤを守らなければならなかったんだ。でもこのレースはグリップを得たり、温度を上げたりするのに必死になっていたんだ。でも一度グリップや温度が上がればプッシュし続けることができるんだ。去年の状態から考えれば僕にとって素晴らしいことだね。本当に今日は良いレースだったよ。

https://www.fiaformula2.com/Latest/7lqnc3LiJc87Jf6OhL8EIk/2020-round-1-post-feature-race-press-conference

 SC中のタイヤのウォームアップは今のピレリタイヤを扱うには重要なものであるが、今回のアイロットはこれを完璧に実行し、リスタート直後からSC導入前に近いペースを見せていた。特にウォームアップが難しいと言われるハードタイヤでできたことが大きかった。これが彼の言う去年から今年にかけての成長だ。F2は若いドライバーが参戦し、1勝をかけて激しく戦うためセーフティカーが出やすいリスクもある。その中で今回アイロットが見せたリスタート後のペースの強さは、今後のレースを戦う上で大きな強みとなるはずだ。

 一方で今回は周やシューマッハに起きたトラブルやミスに救われた部分もある。もし周やシューマッハが生き残っていた時、タイヤの履歴もアイロットとほぼ同じであるため、勝利を引き寄せるほどのペースがあったかどうかは気になるところだ。しかし、今回のレースでアイロットは彼自身の成長と、本来の強さを見せたといえる。今後のレースでは、ライバル達が同じポジションに立って優勝争いをすることは十分に考えられる。その中でアイロットが今後も同じパフォーマンスを見せることができるのか、さらなる成長を楽しみにしながら今後のシーズンを見守っていこう。

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