オーストリアGPの予選では、フェラーリがバルセロナテストの仕様で戦うだけあって、苦戦が強いられることは多くの人が予想していたが、セバスチャン・ベッテルがまさかのQ2落ちで11位、シャルル・ルクレールもなんとかQ3進出を果たすもマクラーレンやレーシングポイントの間に割って入るのが精一杯の7位という結果になった。去年の予選タイムと比べても1秒近く遅くなっている異常事態がフェラーリに起きている。今回はこのフェラーリの遅さについて考えてみよう。
今回のフェラーリの遅さを裏付けるデータがある。それはセクター1に隠されていた。セクター1のタイムを見ると、トップのルイス・ハミルトンが15.898なのに対して、ベッテルが13位の16.272、ルクレールは18位で16.423と、たった16秒ほどのセクターにも関わらず0.4秒も差を付けられていた。セクター1といえば、実質のコーナーはターン1しかなく、残りはDRSが使えるストレート区間になっている。

ではセクター1の通過スピードを見てみよう。するとその結果はトップのハミルトンが323.4km/hなのに対して、ベッテルが314.1km/h、ルクレールが314.04km/hとおよそ10km/hも差があった。逆にセクター2やセクター3ではフェラーリの2人ともに10位以内に入る成績を残しているため、この遅さの主な要因はストレートスピードにあることがわかる。
ではなぜスピードが遅いのか。それを考えたときに、面白いデータがあった。実はアルファロメオの2台のセクター1の通過スピードを見ると、アントニオ・ジョヴィナッツィが325.3km/hで1位、キミ・ライコネンが323.4km/hで2位でなんと通過スピード上では1-2を記録しているのだ。

同じフェラーリPUを使っているアルファロメオが、本家フェラーリよりも速いスピードを記録しており、PUとしてのポテンシャルが低下しているとは考えられない。ベッテルは金曜日のセッション後のインタビューでこのようなコメントを残している。
グリップ、空力が劣っている。クルマがとてもドラッギーなんだ。
https://www.formula1.com/en/video/2020/7/Sebastian_Vettel__Ferrari_car_is_%27too_draggy%27.html
ドラッギーとは、クルマに空気抵抗が多くあり、ストレートスピードが伸びないことを言う。つまりPUのパワーと空力のバランスが取れていないようなコメントを残しているのだ。また予選やレース中のオンボード映像を見ると、特にベッテルの方は度々クルマがスナップしているような挙動を見せており、まったくバランスが取れていないことが我々の目からでも窺える。
フェラーリのマッティア・ビノットはこのようにも語っている。
1秒のロスのうち、0.3秒はコーナーで落としていて、残りの0.7秒はストレートで失っている。これはPUとドラッグによるもので、すぐに解決できない問題だ。
https://www.autosport.com/f1/news/150374/ferrari-losing-07s-per-lap-in-power-unit-performance
このストレートスピードが不足している問題について深刻に捉えているようだ。昨年の自身のタイムから1秒も落としさらには、中団勢にも入っていくこの状況はフェラーリにとってこれ以上無い屈辱的だ。
次のシュタイヤーマルクGPまで4日と時間がない中で、フェラーリにできることは限られている。オーストリアGPでは、様々な幸運もあって2位を獲得することができたが、果たして次戦はこの不利な点をどのように対処し、ハンガリーのアップデートまでに繋げるのか、正念場が続くフェラーリの戦いに注視していきたい。
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