F1あれこれ -FIAのコロナウイルス対策ガイドラインとは

 6月10日にFIAからレース活動を再開するため新型コロナウイルスに対応するためのガイドラインが提示された。ガイドラインは全体で74ページにも及び、レース活動に関わる全ての人の安全を確保するために事細かに注意すべきポイントが書かれている。今回はその内容を見ながら、今後のレースに与える影響を考えていきたい。

 ガイドラインではサーキットのオーガナイザーやチーム、メディア、マーシャル、医療従事者に向けた指針が多く示されていた。特にオーガナイザーに対しては、徹底した消毒と設備の提供が指示されていた。そして検査についても、イベントの前後と最中も行うように助言をしている。モータースポーツの場合、1日だけでイベントが完結するわけではなく、F1の場合4日間レギュレーションで定められたイベントがあり、その間に多くの人が行き来するため、イベント期間中の人の行動管理というものが重要になってくるとガイドラインでは訴えている。

 レースの内容に関しても具体的な指針が示されていた。特に注意深く記載されていたのは、グリッド上でのスタート進行だ。スターティンググリッドはこれまで、チーム関係者だけでなく、多くのVIPやオーガナイザーなどが集まり、メディア関係者も立ち入ってドライバーやエンジニアに対してインタビューを行い、一種の社交の場として決められた人に対して解放されていた。

 しかし感染拡大のリスクを考えると、多くの人が一同に会す場面は避けなければならず、ガイドラインではグリッド上にはチームの関係者でかつレースそのものに従事する人に限定してグリッドをオープンすべきと記載されていた。また今のF1ではピットレーンがオープンとなってからフォーメーションラップスタートまで40分もの時間でグリッド上でイベントの進行が行われていたが、これも15分以内に収めるようにという助言がなされている。このガイドラインはレースそのものに影響を与えるもので、今後各カテゴリがどのように判断するのかは注目していきたいところだ。

 またレース開催中には、レースオフィシャルとチーム関係者が集まって、レースに関するレギュレーションの確認などが行われるブリーフィングが開催されるが、今までは一つの大部屋に集まって行われていたが、これもWeb上での開催を検討するようにということも書かれていた。

 同様にインシデントが起きた際に行われていたスチュワードから当事者への事情聴取も、これまでは面直で行われていたが、これもWebでの聴取も検討するようにというアドバイスがあった。このように、一部の慣しについては、大きく形を変えて行われることになりそうで、最初のうちは試行錯誤しながら各自が対応していくことになるだろう。

 そしてレースには、ドライバーの身を守るためにマーシャルがコースの各所に配置されているが、その規模も数百人単位と非常に多い。このマーシャルについてもガイドラインでは触れられており、十分にソーシャルディスタンスが取れるように工夫を求めていたり、マーシャルポスト、ピット、パドックに消毒や手洗いの設備を設けるようにとサーキット側への配慮が求められている。しかしマーシャルの場合は、特にドライバー救出の際に密集して作業を行うが、その場合はマスクあるいはフェイスガードをしたりする必要性も出てくるため、作業性に支障が出ないように、どのように工夫していくかも課題としてあるだろう。

 最後に我々が接する機会の多いメディアについても紹介しよう。4日間のイベントの間、これまでは数多くの記者会見やインタビューが行われてきたが、これも制限されることになる。例えば、これまで4人から6人のチーム関係者が集まって行われる木曜会見や金曜会見についても、複数のチームが一度に集まって行われるのは回避すべきとしている。また複数のメディアが集まって、多くの質疑応答を交わしていた独自のインタビューも制限の対象となり、代表インタビューという形で行うことを勧めている。

 また予選やレース後に行われていたTOP3会見も、密室に多くの人が集まっていたが、これも少しでも濃厚接触者を減らすために、出席できる人数を制限するように呼び掛けられている。出席ができない関係者に対してはオンラインでも参加できるようにし、平等に質問ができる機会も作られるように配慮するようにとも書かれていた。

 このようにガイドラインでは、レース活動を維持しながら少しでも感染のリスクを抑えるために具体的な指針が述べられていた。従来の姿でレースを見ることはできなくても、それに匹敵するクオリティが我々ファンに届けられるように配慮されているところも今回評価できるポイントだろう。あくまでもこれはガイドラインなので、必ずしもこれに従わなければならないというものではないが、各カテゴリーがこれに倣って行動することになり、それぞれ独自の工夫が見られることも一つの注目ポイントになるはずだ。

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