F1サウンドがサーキットに帰ってきた。この言葉は普段ならシーズン前テストが始まったときや、開幕戦のフリー走行1回目のときに暫くぶりのエンジンサウンドを聴いて思う感想だが、今回は特別だ。なぜならコロナウイルスの影響で2月のバルセロナテストからおよそ3ヶ月ぶりに聴けただけでなく、あると思っていた開幕戦が突如中止となり、以降のグランプリも連鎖的に開催が見直される状況で、いつ開幕できるか分からない日々が続いていたからだ。これほどこのサウンドを心待ちにしていた瞬間は、過去とは比べものにならないほど感動的で我々ファンを少し安堵させるものだった。
先ほどシルバーストンサーキットでメルセデスが2018年型マシン、W09をテストしそのサウンドを鳴り響かせたのだ。しかしそこには新しい風景もあった。今回は、メルセデスがテストをした様子を見ながら、F1の新しいスタイルを掘り下げてみよう。
まずはガレージの様子だ。
ドライバーのバルテリ・ボッタス含めガレージにいる全員がマスクをしている。これがよく言われる「新しい生活様式」の一例とも言えるだろう。そしてドライバーのヘッドレストをセットしているのは、ドライバーと濃厚接触率が高いフィジオだが、彼はフェイスガードまでしており、ドライバーへの感染に対して細心の注意を払っていることが分かる。また3枚目の画像をよく見てみると、少しお互いの距離をとっているようにも見える。従来ならメカニック同士がエンジン音のせいもあるので、かなり近い距離で面と向かって会話をしている様子が見られるが、この画像を見る限りそれも控えているように思える。
上の2月の時と比べて、下の今日のテストとは映っている角度が異なっているが、マシンのタイヤが位置するところに集まっている人は確実に少なくなっている。

このようにしてみると、今日のテストの段階でメルセデスはガレージ内に置く人数を減らして、実際のレースを想定したシミュレーションを行なっていることが窺える。無観客でのレース、いわゆるクローズドイベントとなる場合は、チームの人数も80人に制限されるため、これまで以上に効率的な作業が求められる。そのため、メルセデスはどこよりも早く現場で、各自の作業内容をチェックし来月の開幕に向けて準備を整えているというわけだ。まさにメルセデスらしい抜かりのない行動と言えるだろう。
このように再びF1が活動を再開したことがついに目に見える形で、現れたがその手法は2月のテストの時とは状況が異なっている。ドライバーだけでなく、チームの作業にも影響をもたらすこの新しい様式に早く慣れるため、これから各チームでの試行錯誤が始まる。そしてまずはメルセデスが先陣を切って、チャンピオンチームらしくお手本を見せつけたというところだろう。
コメント