前回に引き続き今回もチェイス・キャリーのインタビューの様子を見てみよう。今回はコロナウイルスによって新たなレースの運営方法について注目してみたい。
まずは、今多くの話題が挙がっているリバースグリッドの案についてだ。レッドブルは賛成の立場を示す一方で、メルセデスは反対の立場を立っており、リバースグリッドの採用にはまだ多くの議論が必要とされているように見えるが、キャリーはこの提案に関して次のように語っている。
これまでも数年にわたって競技のやり方を変えようと議論したことはあったよ。F1に対しては尊敬を持っているし、偉大なものであり続けたいと思っているが、ファンのためにもこれまでの経験を変えることも必要ではないかと思っているんだ。現時点ではリバースグリッドについても議論を交わしているが、この短期間でルールを変えることに対して反対の意思を見せているチームもある。シーズン中の変更にあたっては多くのことを尊重したいし、必要なときに変更を入れようとは考えている。何がスポーツにとって新しい要素として加えることができるのか、どんなユニークでチャレンジングなことができるのか考え続けているんだ。そして導入した変化がF1をより面白くさせることを願っているよ。
この再開されるシーズンにリバースグリッドが採用されるかどうかについては明言を避けたが、議論を続けており、適切なタイミングでの導入を目指しているという。これも現在のリバティメディア体制が目指している競争の改善を目指したもので、決して保守的な体制でないことは窺える。
そして話題は2021年から導入されるコスト制限についてになった。テクニカルレギュレーションは1年の延期となったが、ファイナンシャルレギュレーションについては予定通り2021年からの導入が決まっており、さらには予算額も当初の制限額よりもさらに厳しく設定して、チームの経済を後押しする構えをしている。
このコスト削減は競争力を高めて、レースの本質を見るためにはとても重要なものだと思うんだ。この5年は同じ3チームが表彰台を独占するような状況が続いているが、F1は他のモータースポーツチームよりも10倍の予算を使って競うスポーツなんだ。決してリソースが不足しているわけではなくて、各チームがどれくらいのお金を使っているのかを知ることによって、健全な経済活動を促進させて長期にわたって活動を続けてほしいんだ。このコスト削減によって、F1にとっても明るい未来が待っていると信じているよ。10チームが争っている中で、今は3チームしか優勝争いをしていないが、他のチームもそれに加わることで、F1全体にとって健全な運営に繋がると考えているんだ。
予算制限に対しては、F1チームの経済を支える一方で、競争をより激しくさせるためのエッセンスとしても利用したい考えだ。
先ほどのリバースグリッドでもキャリーが意思を示していたように、彼がF1に対して優先的に取り組みたいのは、「F1をよりエキサイティングにする」ということだ。コロナウイルスによって前代未聞の難しい状況にあってもその意思だけは弱めておらず、継続しているところは彼のポリシーの強さを感じる。
再開直後は、従来のようにはいかず、観客も無観客で、メディア対応も減ることが想定されるが、そのような状況にあってもいかにF1をエキサイティングに見せることができるのか、リバティメディアの手腕が試されていると言っても過言ではないだろう。我々も、7月の開幕でどのようなF1が映るのか始まってみないと分からないところが多いが、キャリーをはじめとするリバティメディアはF1を今までと同等あるいはそれ以上にエキサイティングに見せるため既に多くの対策を検討している。再開するときにどのような要素がF1に加わるのか、その日が来るまでのお楽しみといったところだろう。我々もどのような姿を見せるのか、様々な期待を膨らませながら楽しみに待ちたいところだ。
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