F1ニュース日記 -チェイス・キャリーが語るコロナ禍でのレース再開

 昨日、F1は7月からオーストリアでの開幕から、ヨーロッパでの8戦のカレンダーを発表した。F1.comではチェイス・キャリーに対してこのカレンダー発表に至った経緯などをインタビュー形式で伝えていた。そこには未だに感染が収束しない状況での再開に対する葛藤とチームが今喫緊の問題として抱える経済状況を考えた中での決断の裏を語っていた。今回はその様子を掻い摘みながら紹介したいと思う。

F1 boss Chase Carey on the 2020 calendar, new regulations and commercial agreements | Formula 1®
In a wide-ranging interview F1 boss Chase Carey explains the challenges of creating a revised calendar, how F1 came together to create historic new regulations ...

 まずキャリーは今回の発表に至った理由を次のように語っている。

 ここ数年我々はとても明確なゴールを掲げて進んできた、競争を良くすること、行動の改善、そしてF1に携わる人たちの健全なビジネスを支援することだ。そして私が思うに、コロナウイルスが生み出したものは非常事態そのものなんだ。そしてこの非常事態の間、ウイルスと戦うために私たちが優先すべきことを考えてきた結果が今回の発表なんだ。

 先が完全に見通せない中で各主催者と協力して2020年のカレンダーをいくつかのサーキットでの開催として再び発表できたことは良いことだと思う。そして今も私は全ての主催者と会話を続けているし、ファンも含めて様々な状況が複雑に絡んで多くの人が苦しんでいるところから這い上がれるように、残りのカレンダーについて6月の終わりまでを目標に作業を進めていることだ。今も全員の安全を最優先に考えているし、浮かび上がる問題を理解しながらあまり急がずに正しい判断を下したいと思う。

 まず今回の発表にいたっては、これまでリバティメディアがF1の実権を握るようになってから掲げてきたポリシーに従って決断を下したことが窺える。そして主催者側も経済的な不安を抱え、レースの開催を渇望していただけに今回の発表に至ったことは前向きに捉えている。そして6月中に完全なカレンダーの発表も目指しているとして、良好な状況もアピールしている。

 そして今回の発表に伴って、レース期間中の感染対策も注目されているが、そのガイドラインも現在作成中ということだ。

 外部から専門家を集めて、80から90ページになるガイドラインを作成しているところだ。そこには、サーキットに行くまでの方法、ホテルやサーキットまでのアクセス、食事、洗面所、検査の手順などを載せるつもりだ。また陽性が出た時の手順も載せて隔離する方法も含めてガンドラインにしているんだ。一人一人が感染する可能性がある泡のようなものだから、そのリスクをなるべく少なくするために手順を管理して準備をしているところだ。しかしF1ではピットストップのときに、スタッフ同士の距離を2m保つこともできないので、各チームごとでのソーシャルディスタンスをとってもらうような形で徹底したいと考えているよ。

 オーストラリアの時は、事態が流れている中で起きたことなので対処することはできなかったが、今は手順や設備もある。

 実際にF1では既に検査体制、移動の管理やソーシャルディスタンスについての対策を公表している。それは3月のオーストラリアでの失敗で失われたF1に対しての信頼を取り戻そうとする姿勢が見られている。しかし、今日プロ野球の読売ジャイアンツの選手からの感染も発覚しているように、実際に活動が再開するまでその安心が拭えないのも事実だが、陽性者が出た時の対応も細かに規定するということだ。

 そして今後の観客動員も視野に入れて検討が進められていることも明らかにしている。

 私たちにとってファンは重要な要素だ。ファンあってのスポーツなので、私たちはファンを愛しているよ。同時にファンの安全確保にも努めなければならないことも理解している。安全な形でなるべく早くファンを入れたいとは思っているよ。そして秋には観客を入れた形での開催を目標にしているよ。スタンドが満席になる光景は見られないかもしれないけどね。でも現実的にはファンを入れた形での開催も可能になると思っているよ。

 観客動員に関しては、具体的なロードマップも示されていない状況ではないが、様々な対策を講じながら実現させたい構えも見せている。「秋ごろ」という言葉も出てきたので、アジア圏ないしアメリカ圏での動員を目論んでいるのだろうが、これには慎重な対応が必要になるはずだ。

 今回このインタビューを通して、状況の良好化が進み、いよいよグリーンシグナルが灯った2020年のF1だが、実際に始めてみないとわからない要素が多くある。今回のキャリーのインタビューは、具体的な状況の説明というよりはF1としての意思を改めて見せて、事態が前進していることのアピールが中心になったが、シーズンが始まったときにその青写真が現実のものとなるか注目していきたいところだ。

 何よりF1には何百、何千もの人が関わるスポーツで、他の競技とは比べものにならないほどの大きさで開催される。それは無観客であっても大きなリスクを伴うものであって、レギュラードライバーに感染すればシーズンだけでなく、ドライバーの人生そのものにも影響しかねないものだ。特に成績を挙げなければ、チームから離脱を宣告しかねないドライバーにとっては一大事になるだろう。

 キャリーは「レギュラードライバーがいなくても、リザーブドライバーが使えるシステムもある」とも言っていたが、我々としては完全な形でのチャンピオンシップを見たいし、メンバーが感染したことによって、シーズンそのものがアンチクライマックスとなるようなことも望んでいないはずだ。オーストラリアでの失敗は2度と許されないという、大きなプレッシャーを抱えながら、再開への扉を突き進むことになったF1だが、とにかく安全に開催されることを願いながら2020シーズンを見守りたい。

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