F1ニュース日記 -バーチャルレースではあってもマナーは守ろう

 先日行われたインディカーのバーチャルレースにおける事件が、ネット上で多くの話題を集めている。その原因は、シモン・パジェノーとランド・ノリスの接触事故によるものだ。実際のレース中の行動と、バーチャルレースのあり方について今回は考えていきたい。

 インディカーとしては初のインディ500を模擬したバーチャルレースともあって世界中から注目されていたこのイベントは、アメリカNBCによって全世界にライブ配信されレース前から多くの話題を呼んでいた。中継の中では実際のレースさながらに美しい国歌の披露もなされ、その雰囲気はまさにインディ500だった。

INDYCAR iRacing Challenge: Round 6 – Indianapolis Motor Speedway

 ところがその雰囲気を一瞬にして台無しにしてしまう事件が起きてしまった。まずレースの展開を確認しよう。36周目にトップを走っていたパジェノーがピットへ入り、その後51周目にノリスがタイヤを交換した。これにより2人のタイヤの履歴は15周ある。そして56周目にパジェノーがトップのグラハム・レイホールに続く2位にまでポジションを戻していた。そして途中イエローコーションを挟みながらノリスもフレッシュタイヤを生かして61周目に3位に付けた。62周目に入ったところで、内側からノリス、レイホール、パジェノーの3ワイドになってターン2へと侵入していった。そしてノリスが後ろからレイホールの内側を刺し、トップに立つ間にレイホールが姿勢を乱しパジェノーと接触した。これによりパジェノーは優勝争いから離脱した。

 これによってパジェノーはノリスにレースを台無しにされたとして激怒、「ノリスを追い出してやる」とTwitch上でコメントした。その後周回遅れとなった66周目のターン4の立ち上がりでノリスの進路を妨害し、再び両者が接触。ノリスも優勝争いをしていたが離脱してしまった。

 ノリスはレイホールやパジェノーに比べて若いタイヤを履いていたので、レース展開としては有利な状況にあった。当然トップを狙わない理由もないので、果敢に内側から3ワイドになりながらも切り込んでいった。この動きとしては真っ当のように思える。しかしパジェノーは彼の死角でノリスが入ってきたことで、レイホールの動きを乱しクラッシュの要因を作ったとして、怒りをあげたのだろうがそこで感情を鎮めるべきだった。クラッシュした後は周回遅れになっているのだから、ここは通常のレース通り後続車に走路を譲りオフラインへマシンを退避させるべきだったが、ノリスの進路を妨害した挙句、追突を誘った。これが去年インディ500を初制覇したドライバーのすることかということで批判がパジェノーに集中することになったが、この批判は避けられないものだろう。

 この事件の関係者となってしまったノリスは、レース後のTwitchでの配信で笑顔を見せており、これ以上の争いの発展は避けられたが、後味の悪いイベントとなってしまったことは変わりがない。

 しかし残念ながら事件はこれだけで終わらなかった。続くファイナルラップのホームストレートに戻ってきたところで、チェッカー目前だったトップのオリバー・アスキューの横をサンティノ・フェルッチが接触し、アスキューの優勝を阻止した格好となった。フェルッチの行動は優勝を狙うためだったことを考えると、確信犯としか言いようがない。

 この2つの事件によって、終わったときにはレース前の期待感を裏切られるような雰囲気となってしまった。いずれの接触も、バーチャルなので怪我人は当然でなかったが、実際のレースでこの2つの事故が起きていたら、死者が出てもおかしくないようなクラッシュだった。一部の意見として「これはゲームだから誰も怪我をしないし大丈夫」という人もいるが、世界中のモータースポーツファンが注目している中で、プロのドライバーとしてやる行動ではないと思う。ゲームなので怪我はしないが、プロのドライバーとしてやるならば1対1でフェアに戦い、お互いを尊敬、尊重するスポーツマンシップを持って戦うべきだと思う。

 このブログでも何度か触れているが、このバーチャルレースは世界中がコロナウイルスに苦しむ状況にある中で、自宅で過ごすことを余儀なくされているファンのためのイベントでもあるが、本物のシミュレーターさながらに練習の場として活用しているドライバーもいる。今回のこのパジェノーとフェルッチの行動はそれらの人に対する尊敬の念を欠いた行動でもあると私は思う。

 現在レーシングゲームとして展開されているF12019やグランツーリスモSPORTでは、オンライン対戦をする際に、参加するドライバー達のレース中のマナーを自動採点し、その点数に応じて出場できるレースに制限をかけている。グランツーリスモではさらに、他人に対して悪態をつくような行動をすると、オンライン対戦から退場を求められ、復帰もできないようなシステムも搭載されている。

 実際のレースでも、悪態をついたドライバーに対してペナルティが課されるようにバーチャルレースでも今回のようなことが起きてしまうのであれば同様のシステムが必要だろう。特にフェルッチに関しては、実際のレースでも再三不必要なクラッシュを犯して出場停止処分を受けたためにインディカーに仕事の場を移したものの、今回の行動でもその反省がなされているように見えず非常に残念だった。

 プロのドライバーとして、自宅にいるファンを楽しませるのであれば、実際のレースさながらにフェアなバトルで盛り上げてほしい。そしてそれを見ている未来のプロドライバーを目指す子ども達のためにもお手本となるプレーを見せてほしい。プロのスポーツマンであれば、それにふさわしい行動をするべきだとこの事件から考える。

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