今回はF1チームが抱える様々な経済的な影響とそれに対する主張を見ていこう。F1は年間のコンストラクターズの成績によって与えられる分配金が勢力に大きな影響を及ぼしており、上位チームと下位チームでは捉え方も異なる。ここ最近確認された各チームからのコメントには、その様子が垣間見えている。
まずはアルファ・タウリのフランツ・トストの言葉から見てみよう。

レースが行わなければ、合意した内容からは実際の活動が減少しているので、我々が得るべき収入も減っている。1レース開催されないだけで、150万から200万ユーロほどの損失だ。7月にレースが戻って来ればまだ問題ないが、1年間レースが全く開催されないとなれば事態はより深刻になる。収入が何もないとなると、それは経済的な災害だ。
https://www.autosport.com/f1/news/149129/every-missed-race-could-cost-alphatauri-2million
とその危機感を「経済的な災害」という生々しい言葉で表現している。それは200万ユーロ(2億3200万円)の損失という具体的な数字からも分かる。レースの開催を急ぐのは、クラスターの発生など更なる感染拡大を引き起こしかねないので、得策とは言えないが、何らかの対策を施さなければチームの消滅も現実味を帯びてくる。
一方で、トップチームとして戦うフェラーリのマッティア・ビノットは、COVID-19の影響で2021年からの予算制限が175万ユーロから150万ユーロにまで厳格化され、現在更に145万ユーロまでの制限が検討されていることについて次のような意見を述べている。

145万ユーロの予算制限は去年の6月に設定されたものと比べるとこれは全く新しい制限だ。これ以上の制限は従業員の補償も厳しくなるので、更なる犠牲なしには実現できるものではない。もし予算がこれ以上下がるようなことがあれば、我々の伝統的なDNAを引き継ぐことも難しくなるだろう。
今他のチームが危機的状況に面しているのならば、この制限のやり方も基礎から考え直す必要があるだろう。我々はこの再検討に対しては協力するつもりだ。構造的な変更を行うのは単純なことではないが、明らかに我々はこのパンデミックによって困難な状況にある。しかし、今は感染拡大が懸念されるので判断を急ぐべきではない。
https://www.autosport.com/f1/news/149115/ferrari-will-not-accept-further-cost-cap-reduction
更なる予算制限によって及ぼす影響は下位チームとは違ったことが想定されることを明かしている。トップチームとなれば何千人規模でF1のプロジェクトを動かしているが、予算が減ればそれだけ活動範囲も絞られ、対価を支払うべき人も減少する。そうすると雇用問題に発展するのも事実だ。
このフェラーリの反応に対してマクラーレンのザック・ブラウンは異論を唱えている。

我々は今F1の将来に対して危機に直面しているんだ。私は今健康に関して議論を多くかわしているところだが、私が先に見たコメントは事態を止めるようなものにはならないし、事実だと思うことに反していると思う。
私は誰かがF1から撤退する姿を見たくはない。でも現実的に考えれば、グリッドには18台だけが残るだろう。予算制限の金額を高くしても、F1への投資に対して手を緩めれば16台や18台の存続は可能だ。
https://www.autosport.com/f1/news/149127/brown-ferrari-cost-cap-arguments-dont-stack-up
F1にもたらしている経済的な影響は明らかに現実味を帯びてきているが、再び20台でのレースを実現させるために今何らかの対策を講じる必要があるだろう。
またこの状況は各チームのコメントから見ても分かるように、単純に予算制限の厳格化が事態の克服にも繋がらない。ビノットが言うように、今の状況を見れば予算制限だけでなく、F1の構造を変えることを考えるフェーズに来ているように感じる。
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