ハースはピエトロ・フィッティパルディとルイ・デレトラズをテスト兼リザーブドライバーとして起用することを発表した。この2人の戦跡と経歴を見ながらハースがこの2人を起用した理由を探っていこう。
まずピエトロ・フィッティパルディは言わずも知れた2度のワールドチャンピオンのエマーソン・フィッティパルディの孫で2019年からハースのテスト兼リザーブドライバーとして活動している。2019年はDTMを中心にレースをしたが、年間のランキングでは15位と期待されていた成績を残すことはできなかった。2020年はアジアF3に参戦し、15戦を戦って13戦目のタイで3位表彰台を獲得し、ランキングとしては5位とスーパーライセンスに必要なポイント40点獲得にはまだ道のりが遠い状況だ。
一方デレトラズは2019年からシミュレータドライバーとしてハースから起用され活動している。レースでは2016年からGP2に参戦し、まだ優勝は経験していないが、表彰台は5回獲得しており、年間ランキングでの最高は2019シーズンの8位だ。とはいえデレトラズもスーパーライセンス獲得には道半ばのところで、厳しい状況が続いている。
ではこの2人を起用したのはなぜなのか、ハース側のコメントを見てみよう。チーム代表のギュンターシュタイナーはリリースの中で次のように述べている。
ピエトロとルイはこれまでの1年間大きく成長し、再び彼らをテスト兼リザーブドライバーとして発表できることを嬉しく思っている。彼らのシミュレータでの仕事ぶりは去年の様々な困難に対して疑いようのないほど価値があるもので、これからも彼らと仕事ができることを楽しみにしているんだ。彼らがロマン・グロージャン、ケビン・マグヌッセンとエンジニアリングチームに対して重要なインプットを与えてくれると期待しているよ。
https://www.haasf1team.com/news/fittipaldi-and-del%C3%A9traz-confirmed-official-test-and-reserve-drivers
彼らのレースそのものの成績ではなく、あくまでもこれまでの仕事ぶりを評価しての起用であるとしていることがこの言葉から伺える。逆に起用された2人にとっても、今シーズンからテスト兼リザーブドライバーとしての仕事が待っているので、より実車経験が積めるメリットもありそうだ。
ハースとしては、昨年からの課題を克服するために開発をするためにはこの2人の存在は我々が思っている以上に大きいのかもしれない。シミュレータや実車テストでの結果はなかなか外側からはどのように評価されているのかは見れない部分ではあるが、この2人の契約を継続させていることは、その働きは十分にできているものと考えられる。
一方では彼ら2人に頼らざるをえない状況も、ハースの厳しさを表しているとも考えられる。例えば、ライバルであるアルファロメオは、ロバート・クビサをリザーブドライバーとして起用し、その経験を存分に開発に活かそうとする様子が見られる。ベテランドライバーならではの知識や、他車比較など、若手にはできない要素を備えており、自分たちに不足しているものに気づきやすくなるメリットは少なからずあるだろう。
しかし、ハースは若手の2人だけに絞って開発を担当させているので、レースカーそのもとしての開発への貢献は期待できるが、ベテランが持っている知識や経験には及ばない。このようなドライバーを起用することができない今の状況を見ると、この状況からの脱却は想像がしにくい。
もちろん、2人の仕事に対してはチームとしても満足しているので、このような継続起用となったのだろうが、この状況を打破するにはより強力な手立てが必要だと思う。果たしてこの起用の他に改善策が計画されているのか、注視していきたい。
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