ここまで各日のマイレージと最速タイムを見て各チームのテストの動きを振り返ってきた。今回はいよいよレースシミュレーションの様子を振り返って各チームの勢力を分析していく。
レースシミュレーションは実は各日のベストタイムよりも各チームの勢力を知る上では信頼性の高い情報になる。その理由としてはまずレース走行時には燃料は最大積載量である110kg近くまで搭載し、レースディスタンスである66周を走りきらなければならない。またタイヤも数周走ってすぐに交換とはいかず、たいてい20周以上は走行することになり、なおかつ実戦に近いペースで走らなければ精度の高いタイヤの劣化も知ることもできない。予選ではあるコーナーで手を緩めたり、細かくセッティングを変更したり、燃料を自由に変えてごまかすことはできるが、レースシミュレーションになればそれができる数も限られてくる。
ではレースシミュレーションの結果を振り返ろう。まずこのタイムは私が独自にタイムシートを見ながら収集したものなので、非公式のデータである。またレースシミュレーションをやったと見られるタイミングでのデータを収集したものなので、実際チームがシミュレーションを行なっていた時と異なる場合があるので、その点は了承いただきたい。
まずは各ドライバーのラップタイムを表したものから見てみよう。

今回ラップタイムを計算するにあたっては、ピットのタイミングでガレージに入ったドライバーもいたため、インラップは1分27秒、アウトラップは1分42秒で統一した。縦軸はタイム、横軸は周回になる。
このグラフから見ると総じてメルセデスが速いことが際立つ。特にルイス・ハミルトンはバルテリ・ボッタスよりも0.5秒程度ペースが速いこともあり、圧倒的な速さがあるように見える。しかしハミルトンがシミュレーションを実施したのは2日目の午前中でまだ路面温度もそこまで高くないコンディションだった。そのためタイヤのオーバーヒートを気にしながら、あるところでペースを緩めることもなく走行できたと考えられるので、ボッタスとは直接比較することは難しい。
一方でフェラーリは路面コンディションが悪かった2週目で実施したことを考慮に入れる必要があるが、第1スティントと第3スティントのグラフの傾きに注目すると最後までタイムに大きな落ち込みは見られず、タイヤのデグラデーションに関してはそこまで心配するような状況ではなさそうだ。これはフェラーリがダウンフォースを重視したクルマに作り変えてきている効果が出ているものと考えられる。
一方でレッドブルはマックス・フェルスタッペンが3日目にシミュレーションを実施したが、予選のシミュレーションの時ほどその強さは見られなかった。特に第3スティントの後半はメルセデスとフェラーリは横ばいに推移しているのに対して、わずかにタイムの低下が見られ、最終的にはマクラーレンのカルロス・サインツと同等かそれ以下のタイムを示していることもあった。しかしスティントの最初のラップに目を向けるとメルセデスと同等のタイムを出せており、クルマのポテンシャルとしてはトップレベルに近いものを持っていると見ることもできるだろう。
中団に目を向けてみるとマクラーレンが常にトップ3に近いところで推移しており、今年もベスト・オブ・レストの椅子に座るために去年から継続してそのポテンシャルを持てていることが伺える。一方でマクラーレンのライバルとの見方もされているアルファタウリはダニール・クビアト、ピエール・ガスリーの両ドライバーともにスティントの前半はマクラーレンと同等のタイムを残せているものの、後半になるとタイヤがタレているのか、大きく落ち込んでいるのは少し気がかりなところだ。トロロッソの頃から空力不足が否めないところではあるが、果たしてシーズン後半にかけてその弱みをどこまで補えるかがポイントとなってきそうだ。
次はこのラップタイムをもとにレース中のギャップを想定してみよう。
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