今回はパット・シモンズが明かしたこれからのF1のイベント性向上のために導入されるある手法について紹介しよう。

今よりもF1を盛り上げるために、技術面から様々な検討を行なっているパット・シモンズはその検討方法の一部を明かした。それはガルバニック皮膚反応というものを一部のファンから観察しているのだという。
ガルバニック皮膚反応とは、「皮膚表面の発汗は交感神経によってコントロールされる」という原理を利用して、 皮膚上の発汗量を測定することで、感情の状態を把握する手法のことだ。試験者にはリストバンドや指先に小さいセンサーを付けるだけなので、簡単な測定で感情が分かるメリットがある。
この測定は既に行われており、現段階でレース終盤に盛り上がる方がファンの印象が良いという調査結果もあるようだ。ファンが興奮するポイントを分析し、そのポイントを生み出すためにピレリなどと協力して改革を推進するようだ。
しかしこの手法について私は違和感を覚える。F1というスポーツはこれまで、レギュレーションの範囲内でチームが限界までマシン開発をし、ドライバーがその能力を最大限引き出すというスタイルであった。しかしこの方針は、レギュレーションやタイヤの仕様をファンの興奮に合わせるようにするということだ。つまり、F1側がある程度想定したレース展開となるようにレースを製作しているようなイメージがあり、それが私自身の違和感となっているのだ。
また、レギュレーションやタイヤからF1を変えようとしても、チームとしてはトップを目指して戦っているのだから、毎回荒れるようなレースは求めておらず、むしろ安定して上位に入ることを望んでおり、それを果たすために開発をしているはずだ。つまり、レギュレーションやタイヤの仕様を変えたところで、直後はF1の狙い通りになるかもしれないが、チームはすぐに対応し、その効果は薄れるだろう。そしてF1は新しいスパイスを求めてレギュレーションを変えようとする。しかし、短いスパンでレギュレーションを変えられても、長く見ているファンにとってはその流れに追従できず、”理解しにくいF1”になってしまう可能性もある。
そんなネガティブのスパイラルがあることも考慮してF1は今後の方針を検討していると願いたいところだ。ファンからデータを取ってレースを面白くしようとしているのならば、ファンを第一に考えたF1になることを望む。
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